芸術家の家に生まれた、料理人
アラン・パッサール(1956年生まれ)は、フランス・ブルターニュのラ・ゲルシュ=ド=ブルターニュ出身のシェフである。彫刻家の祖父、音楽家の父を持ち、素材と形と音に囲まれて育った。その感性は、後に彼が選ぶ道を静かに準備していた。
三ツ星を手にして、捨てたもの
1971年にキャリアをスタートし、1986年にパリ7区のレストラン「ラルページュ」を開業。1996年にミシュラン三ツ星を獲得し、以来一度もその評価を手放していない。しかし彼の名を世界に刻んだのは、星の数ではなく、2001年の決断だった——三ツ星という実績を支えた肉料理をすべてメニューから排除し、野菜を主役に据えた。
リスクを恐れた先に、何もない
「リスクを恐れてしまったとき、残る選択肢はひとつだけだ。何もしないことだ」とパッサールは言う。その言葉通り、自らの農園を持ち、土と対話しながら料理を作り続けている。コラージュや彫刻など視覚芸術にも深く関与し、料理と美術の境界を静かに問い続ける。
一軒だけ、毎日キッチンに立つ
店は一軒だけ。ブランド拡張にも多店舗展開にも目もくれない。毎日自らキッチンに立ち、客を迎える。ジェラール・ハーテンが撮影したパッサールの手は、厨房の時間を刻んだ、一人の職人の肖像である。
